教育データベース

2019.03.11

中学校

社会

中越

平成30年度

事象の多面性・多角性を基に、批判的に追求する生徒の育成

新潟大学教育学部附属長岡中学校 恩田 隆介

 現代社会は多くの情報があふれ、様々な要因が複雑に絡み合い、簡単には答えを出すことができない問題が山積しています。これからの社会を切り開いていくためには、たとえ答えのない問いに対しても、より妥当な納得解・最適解を他者と共に粘り強く見いだしていく力が求められています。一面的な情報を鵜呑みにせず、様々な資料を基に、いかに論理的に自分の考えを構築できるか、他者の考えを共感的に捉え、省察的に自身の考えを見直すことができるかが重要です。そのためには、事象の多面性・多角性を認識しつつ、根拠(資料・事実)と論拠(解釈)を明確にして自分の考えをもつことと、互いの主張の根拠と論拠に焦点を当てた話合いをすることが必要です。自他の考えを十分に吟味することで、初めて納得解や最適解が導き出せると考えています。
 本研究ではこれらの力を育むために「批判的思考による問い直し」に焦点を当てています。批判的思考とは、自他の主張の説得力や妥当性を総合的に吟味することであり、批判的に思考するためには、自他への問い直しが不可欠です。これらを単元の中に位置付け、実践を行いました。地理的分野「モンゴルの砂漠化を食い止めるには?」(実践1)と、歴史的分野「蘇我氏が絶大な権力をもつに至った理由とは?」(実践2)の2つの実践で、以下の3つの手立てを講じ、検証しました。
①根拠と論拠を明確にする思考の可視化
 自分の考えの根拠と論拠を明確にさせるために、トゥールミンモデルを参考にしたワークシートを活用し、思考の可視化を図りました。これにより、話合いで自他の差異が視覚的に認識しやすくなり、問い直しが効果的に行われました。
②話合いで批判的思考を育むためのフレームワークの導入
 実践1では、知識構成型ジグソーを取り入れました。4つの視点で資料を分け、生活班(4人)で分担して追求させました。同じ視点を追求したエキスパートで主張の妥当性を検討し、その後、生活班で交流を行いました。話合いの活性化を図るとともに、他者と自己の視点を比較・検討しながら課題解決に向かって吟味する姿を期待しました。実践2では、実践1と同様に4つの視点で資料を用意しましたが、役割分担はせずに全ての資料を全員に提示しました。その上で、ランキングを活用することで、理由付けの必然性を生み、自他の主張を吟味しやすくなるような場を設定しました。
③問い直しを促す型の提示
 話合いで意識させたい「問い直しの型」を示し、議論の焦点化と活性化をねらいました。型を積極的に活用させることで、省察的に自他の考えを見直す姿勢がより一層促されると考えました。
 今後も、批判的思考による問い直しに焦点を当てて、研究を進めていきます。