教育データベース

2015.10.20

小学校

特別支援教育

新潟

平成27年度

小学校中学年の発達障害児童を対象とした通常学級における他者との相互作用の変容に関する研究

新潟市立松浜小学校 加茂 勇

問題と目的
 文部科学省中央教育審議会初等中等教育分科会は,2010年7月に「特別支援教育の在り方に関する特別委員会」を設置し,同12月にはインクルーシブ教育システムの理念とそれに向かっていく方向性を打ち出している。インクルーシブ教育の目的の一つが,特別なニーズのある子どもが健常児や教師との相互作用の中で社会的関係を経験し行動を学習していくことであるとすれば,特別支援教育を推進する上で統合された教育環境の授業場面における発達障害児童の支援方法の研究は緊急かつ重要であるといえる。
 本研究では,小学校中学年の発達障害児童が,学校生活における他者との相互作用の中で,教室という場でどのように活動し,関係性を築こうとしているかについて明らかにする。そして,発達障害児童の相互作用を分析的に整理・記述することにより,通常の学級における発達障害児童の教育実践に関する仮説を生成する。
結果と考察
 発達障害児童には学校での生活場面や学習場面において様々な困難があった。発達障害児童は,成功へつながりにくい場面に出くわすと,回避や放棄の方略をとることが多くあった。そこでは,他の児童が用いるような原因を探りもう一度行うという認知的再評価という方略を示そうとはしなかった。できないから回避という方略をとる発達障害児童のことを周りの児童は「ふざけているからできない」と評価していた。これは,他者である中学年の児童が行動の原因を客観的に認識できなかったからであると考える。
 しかし,授業者が良かった行為や発言等を言語化しながら,感情や行動を他者が認め意味を与えることができれば,認知的再評価の方略を示すことができた。
 本研究を通して,通常の学級における発達障害児童の教育実践では,個のニーズに合致する小集団等の活動を媒介にして,発達障害児童と他者である児童の認知的な発達に配慮しながら,快や不快を共に感じあうような情動共有がなされる相互作用場面をつくることが有効であるという仮説を生成した。