教育データベース

2014.10.25

小学校

理科

新潟

平成26年度

「教育実践」 素朴概念の変換を図る理科指導の取組

新潟市立上山小学校 豊岡 篤

理科の学習では,問題解決の過程を経て知識を獲得したにもかかわらず,時間が経過すると獲得した知識を忘れてしまったり,学習前の考えに戻ってしまったりすることがある。その原因の1つとして,児童が日常生活の積み重ねで形成・獲得した自然事象に対する誤った知識や見方・考え方である素朴概念が残っていることが考えられる。正しい知識を定着させ,科学的な見方・考え方を養うためには,素朴概念を科学的な概念に変換させることが必要である。その手立てとして,初めに素朴概念を確実に崩し,その後,新たに正しい知識を与えることで素朴概念を正しい科学的な概念に変換させる。
 本研究では,2つの事象を比較し,明らかに素朴概念では説明できない事象を示すことで,まずは素朴概念を崩す。そして新たな考え方をしなければならない場面を意図的に作り概念変換を図る。まず,4年「水の3つのすがた」では,水が沸騰して出てくる泡の正体について水蒸気と空気を比較させることで概念変換を図った。その結果,明らかに違う2つの事象を提示することで,児童の思考に揺さぶりをかけることができ,正しい知識の獲得に繋がった。また,追調査の結果,正しい知識の定着について一定の成果を得られた。また,3年「昆虫を調べよう」では,概念変換の過程に焦点をあて,昆虫と昆虫ではない虫を比較した実践を行った。素朴概念としてもっていた曖昧な昆虫の定義ではバッタなどの体のつくりを正しく示すことができない。昆虫と昆虫ではない虫を比較し,違いを明らかにすることで素朴概念を崩す。その後,正しい昆虫の定義を明らかにすることで,科学的で正しい昆虫の定義を理解させた。
 これらの実践から,児童の素朴概念を変換するための手立てとして,明らかに異なる2つの事象を提示する手立てと,素朴概念を崩した後に新たに正しい知識を与える授業の流れが児童に与えた成果と,その授業の課題を明らかにした。